なぜ「東京は無理」「催事や展示会は効果がない」と決めつけてしまうのか?成功企業との決定的な違い


「うちみたいな地方の小さい会社が東京なんて無理」「展示会に出ても、どうせ売れないでしょ」

そう言って、新たな販路開拓を諦めていませんか?社長は、日々の製造や経営で多忙な毎日を送っていることでしょう。催事や展示会が効果がないという決めつけが、実は大きな機会損失になっているかもしれません。多くの社長が口にするこの言葉の裏には、共通して「1回やってみたけどダメだったから」という経験が隠されています。

ある社長は「東京での催事は無理だ」と言います。なぜですか?と尋ねると、「昔、一度だけ参加したけど、ほとんど売れなかった」と答えました。また別の社長は、「展示会は効果がない」と断言します。理由を聞けば、「1回だけ出展してみたけど、名刺交換だけで終わってしまった」と言います。
さらに、バイヤー商談会についても、「FCPシートの書類選考で落ちたから、もうやめた」という声も聞かれます。

これらは、成功している食品会社と、そうでない会社の決定的な違いを示しています。成功している企業は、決して1回の失敗で諦めません。

成功は「試行回数」と「改善」の先にしかない

私がこれまで見てきた、地域を代表するような成功している小さい食品会社の社長たちは、決して1回で諦めません。1回目が失敗に終わっても、その経験を次に活かすための貴重なデータだと考えます。失敗から学び、改善する。このPDCAサイクルを回し続けることで、やがて成功への道が開けてきます。別に特別なノウハウや資金がたくさんあったわけではありません。

では、なぜたった1回の催事や展示会で結果が出ないのでしょうか?そこには、準備不足・経験不足や続けないでやめてしまう、そしてターゲットと売り方のズレといった、いくつかの共通した課題があります。

1. 徹底的な準備の欠如

東京での催事に出るにしても、展示会に出るにしても、十分な準備なしに成功はありません。成功している企業は、出店前に徹底的にリサーチします。

  • ターゲット顧客の明確化: 誰に、何を、どのように伝えたいのかを具体的に定めています。例えば、「東京の30代〜40代の健康志向の主婦」のように、ターゲットを絞り込むことで、彼らが喜ぶ商品陳列や接客、PR方法が見えてきます。
  • 競合分析: 同じイベントに出展する競合他社はどこか?彼らの強みと弱みは何か?御社の商品が彼らに勝てる点はどこか?これらを事前に把握することで、差別化ポイントを明確にできます。
  • 訴求ポイントの洗い出し: なぜ御社の商品が選ばれるのか?ただ「美味しい」だけでは不十分です。「この地域の特定の気候で育った希少な食材を使っている」「一般的な製法では失われがちな栄養素を守る特別な製造方法で作っている」など、具体的なストーリーや強みを準備しています。
  • 現場でのシミュレーション: 実際にどのように商品を陳列し、試食を提供するか、お客さまとの会話で何を伝えるかまで、事前にチーム内でシミュレーションを行います。

ただ商品を持って行くだけでは、思うような結果は得られません。特に、地方から出ていく場合、大きなコストがかかるため、「1回で元を取ろう」と考えてしまいがちです。その考え方こそが、結果を出せない原因になります。

まずは「場に慣れること」「お客さまの生の声を聴くこと」を目的とすべきです。1回で元をとると考えるならやめたほうがいいです。最初は社長の場慣れとファンの開拓を考えてください。

2. 継続性の欠如と見込み客育成の視点

一度出展しただけで、その後のフォローアップを怠っていませんか?展示会はあくまで「出会いの場」に過ぎません。その後の関係構築こそが、成果を左右します。

成功企業は、名刺交換で終わらせません。

  • 迅速な御礼連絡: 展示会後、すぐに御礼のメールを送ります。その際に、「ブースでお話させていただいた〇〇です」と具体的なやり取りを添えることで、相手の記憶に残ります。
  • 価値ある情報の提供: 連絡を継続する際は、ただ商品の案内をするだけでなく、「御社の売り場に合いそうな新商品の企画書」や、「季節に合わせた具体的なメニュー提案」など、バイヤーにとって価値ある情報を提供します。
  • 定期的な情報発信: すぐに商談に繋がらなくても、新商品の案内や御社の活動を定期的に情報発信し続けます。これにより、バイヤーの「いつか取引したいリスト」に御社の商品が残り続けます。

これらの地道な活動が、やがて大きな商談へと繋がります。

3. FCPシートは「書類」ではなく「御社の顔」

バイヤー商談会で書類選考に落ちたからと諦めていませんか?それは、FCPシートの書き方が悪いか、御社のターゲットとするバイヤーと、御社の商品の魅力にズレがあるのかもしれません。

FCPシート(食品表示規格シート)は、バイヤーが御社の商品を評価する最初の関門です。ここに書かれている内容が、バイヤーの求める情報と合致していなければ、書類選考で落とされてしまうのは当然です。

成功している企業は、FCPシートを単なる書類として扱わず、「御社の顔」として、丁寧に作り込みます。

  • 強みの明確化: 「無添加」「有機栽培」といった一般的な言葉だけでなく、「この無添加は、〇〇という特殊な製法によって実現している」といった具体的な背景や、他社との違いを明確に記載します。商品名、写真にも工夫が必要です。
  • 具体的な売り場の提案: 「高級スーパーのデパ地下でのギフト商材として」「駅ナカのコンビニエンスストアでの新商品として」など、バイヤーが具体的な売り場をイメージできるような提案を盛り込みます。

このズレを修正し、何度でも挑戦することが重要です。

成功事例に学ぶ、諦めない姿勢

ある地方の小さな食品会社は、地元での販路が頭打ちになり、新たな道を探していました。東京での催事に挑戦することを決めました。初回の売上は期待外れ。社長は諦めませんでした。

社長は、なぜ売れなかったのかを徹底的に分析しました。試食の量が少なかった、パッケージが東京の消費者に響かなかった、PRする際の言葉選びが難しかった、など、多くの課題が浮き彫りになりました。

そして、パッケージを刷新し、試食の提供方法を工夫し、お客さまへの声かけの仕方を改善して、再度催事に挑戦しました。その結果、2回目、3回目と回を重ねるごとに売上は伸びていき、最終的には東京の有名百貨店から常設での取引を打診されるまでに成長しました。

また、別の会社は、展示会に出展する際、最初はただ名刺交換をするだけでした。ある時から戦略を変えました。名刺交換をしたバイヤー一人ひとりに、後日、手書きのメッセージを添えたパンフレットを送ったり、「こんな売り場で、こんなお客さまに御社のこの商品を提案したい」という具体的な提案を、名刺交換の際に伝えるようにしました。この地道な努力が実を結び、多くのバイヤーとの信頼関係を築き、次々と取引を成立させていきました。

諦めずに挑戦し続ければ、必ず道は開ける

松下幸之助は「失敗しても、くじけてはいけない。成功するまでやり続けることが大切である」と述べています。

御社は、まだ成功していないのかもしれません。それはまだ「成功までの試行回数が足りていない」だけです。1回、2回であきらめるのではなく、成功している企業がなぜ成功しているのか、その背景を深く考えてみてください。

最初からすべてが順風満帆だったわけではありません。多くの失敗を経験し、その度に改善を重ねてきたからこそ、今の成功があるのです。東京は無理、催事や展示会は効果がない。そう決めつける前に、もう一度だけ挑戦してみませんか?


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