展示会に出展する際、多くの食品会社が頭を悩ませるのがブースのデザインです。「どうすれば目立つか」「派手な装飾で来場者の目を引こう」「美人なコンパニオンを立てよう」と考える方も少なくないでしょう。
結論から言えば、こうした派手な戦略は、食品会社の展示会においてはほとんど意味がありません。
なぜなら、来場者の大半は単なる一般客ではなく、御社の大切なお客様となる可能性のあるバイヤーだからです。
バイヤーは単に面白半分で展示会に来ているわけではありません。お店の売上に貢献してくれる、本当に価値のある商品を探しに来ています。そうしたプロフェッショナルなバイヤーの目に留まり、商談につなげるためには、派手な装飾やコンパニオンなど、本質と関係ない要素に時間とお金をかけるべきではありません。本当に重要なのは、ブースを訪れたバイヤーに「御社が何者で、何を売っているのか」を一瞬で理解させることです。
バイヤーがブースに求める「たった一つのこと」
バイヤーは、展示会を効率よく回るために、常に時間と戦っています。彼らがブースの前を通り過ぎる時間は、わずか数秒です。その短い間に、自社の事業内容や商品の強みを伝えられなければ、次のブースへと足を運んでしまうでしょう。
考えてみてください。御社のブースが、他社と似たような奇抜なデザインや、意味不明なキャッチコピーで埋め尽くされていたら、バイヤーは御社の商品を理解できるでしょうか。派手な照明や大音量の音楽は、かえってバイヤーとの会話を妨げてしまいます。彼らが本当に求めているのは、商品の「中身」に関する情報です。
「この商品は、どんなこだわりを持って作られたのか」「他社の商品と何が違うのか」「どんなマーケットに可能性があるのか」といった、具体的な情報なのです。
だからこそ、御社のブースはシンプルであるべきです。不要な装飾を削ぎ落とし、御社の「顔」と「商品」がはっきりとわかるようにする。これが、ブースで成果を出すための最初のステップになります。
「デザイン不要」なブースの作り方
では、具体的にどのようにブースを設計すればいいのでしょうか。派手なデザインが不要である代わりに、バイヤーが知りたい情報をシンプルに、わかりやすく配置することを心がけてください。
まず、ブースの入り口に、御社が何を扱っている会社なのかを大きく掲示しましょう。
たとえば、「〇〇に特化した健康食品メーカー」や「地元野菜を活かした加工品専門メーカー」といった具合です。これにより、バイヤーは一目で御社が彼らのニーズに合致するかどうかを判断できます。
次に、主力商品を明確に展示してください。商品名、特徴、ターゲット層を、誰が見てもわかるようにキャッチコピーとともに掲げます。たとえば、「無添加の安心感」「〇〇産小麦粉使用」「プロの料理人も認める風味」といった、具体的な強みを示すことが重要です。
また、商談スペースを確保することも忘れてはなりません。多くのバイヤーは、その場で商品の詳細を聞きたいと考えています。座ってじっくり話せる環境を用意することで、より深いコミュニケーションが生まれます。派手な映像を流すより、サンプルを試食・試飲してもらいながら、開発秘話やこだわりを直接語る方が、はるかにバイヤーの心に響くでしょう。
ブースのレイアウトは、来場者が迷わず商品にたどり着けるように、通路を広めに確保し、商品の試食・試飲コーナーをスムーズに案内できるような動線を意識してください。シンプルで機能的なブースは、来場者にとってもストレスが少なく、結果として御社への印象を良くする効果があります。
展示会は「会社の顔」ではなく「商品の顔」
展示会は、御社のブランドイメージを広く知ってもらう場でもありますが、何よりも「商品を売る」ための場所です。御社がどんなに立派な会社であっても、バイヤーが興味を持つのは、その商品が市場でどれだけ売れるか、どれだけ消費者に喜ばれるかという点です。
したがって、ブースに並べるのは、御社の「顔」となるべき商品です。数多くの商品がある場合でも、すべてを並べるのではなく、最も自信のある主力商品に絞り、その魅力を最大限に伝えることに集中しましょう。
商品一つひとつに、開発の背景やこだわり、ストーリーを添えることで、単なるモノではなく、感情に訴えかけることができます。こうしたストーリーは、バイヤーが商談を進める上での強力な武器になります。
また、ブースに立つスタッフも重要です。コンパニオンを雇うのではなく、商品のことを誰よりも理解している社長や社員が立つべきです。商品開発者や営業担当者が直接バイヤーと話すことで、熱意や専門性が伝わり、信頼関係を築きやすくなります。
彼らは商品の魅力だけでなく、市場の動向や消費者のニーズにも精通しているため、バイヤーからの鋭い質問にも的確に答えることができるでしょう。そして、そのやり取りこそが、将来のビジネスを決定づける重要な要素となります。
展示会で「成果を出す」ためのチェックリスト
展示会出展を成功させるために、以下のチェックリストを参考にしてみてください。御社のブースが、本当にバイヤーに響くものになっているか、確認してみましょう。
- ブースの正面に、御社の事業内容を端的に示すキャッチコピーがあるか?
- 主力商品が明確に展示されているか?
- 商品名や特徴、ターゲット層が誰にでもわかるように記載されているか?
- 商品のこだわりやストーリーを伝える資料やPOPは用意されているか?
- バイヤーと落ち着いて話せる商談スペースは確保されているか?
- 試食・試飲はスムーズにできるか?
- ブースに立つのは、商品のことをよく知る御社の社員か?
これらの要素をすべて満たしていれば、派手な装飾がなくても、バイヤーは御社の商品にきっと興味を持つはずです。
バイヤーは本物を見抜く力を持っています。ごまかしや見せかけの華やかさではなく、商品の本質的な価値を伝えることに集中してください。シンプルなブースは、御社の「実力」を物語るものです。
まとめ
展示会は、食品会社にとって、販路を広げるための重要な機会です。しかし、その成功はブースの豪華さや派手さで決まるものではありません。本当に重要なのは、いかにバイヤーに御社の商品の価値を明確に伝えられるかです。
派手な装飾やコンパニオンに頼らず、ブースを「商品の価値を伝えるためのショーケース」と捉え直してください。御社が何者で、どんな商品を作っているのかをシンプルに、そして力強く伝える。これが、展示会で成果を出すための唯一の道です。御社のこだわりが詰まった商品であれば、派手な演出などなくとも、その価値は必ずバイヤーに伝わります。御社の商品は、それ自体が最高の装飾品なのですから。
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