食品会社にとって営業は命の部分です。どんなにおいしい商品をつくっても、
取引先を見つけて売らなければ売上は生まれません。
最近は「営業が苦手」「人がいない」「展示会でつながっても受注に至らない」といった理由で
営業代行を検討する社長も増えています。確かに、営業代行という選択肢には一定のメリットがあります。
ただ、その裏側には見えにくいリスクも存在します。
ここでは、営業代行の実態と、成功・失敗の分かれ道を具体的にお話しします。
営業代行の主なメリット
第一に、人手不足をすぐに補える点です。食品会社では、製造と営業を兼任しているケースが多く、
外回りの時間を確保できないことがあります。営業代行を利用すれば、短期間で販路拡大の動きをつくることができます。
第二に、営業代行会社は多くの取引先ネットワークを持っており、初対面では難しいバイヤーとの接点を生み出せることです。
食品卸や百貨店、ギフト、外食、通販など、ジャンルごとに得意分野を持つ代行業者もあります。
紹介を受ける形で話が進むため、門前払いをされにくいという利点もあります。
第三に、営業経験のない社長にとって学びの機会になることです。代行の活動報告や商談の流れを通じて、
どのように商品を提案すれば相手に伝わるのか、自社で営業体制を整える参考にもなります。
営業代行のデメリット
一方で、営業代行には根本的な限界があります。最大の問題は「自社の想い」が伝わらないことです。
代行業者は商品を理解していても、その会社の歴史や理念までは伝えきれません。
食品の魅力はスペックだけでなく、背景にある「つくり手の姿勢」や「地域のストーリー」が鍵を握ります。
代行任せではそこが抜け落ちてしまいます。
もう一つの問題は、継続性がないことです。営業代行は契約期間中の活動に限定されるため、終了すれば販路は止まります。
引き継ぎ体制がないまま終わってしまうと、せっかくの成果も一過性になります。
実際、短期契約で数社に見積りを出しただけで終わるケースも少なくありません。
さらに、費用面の負担も軽くありません。成果報酬型に見えても、初期費用や月額固定費が必要なことが多く、
3ヶ月で数十万円になることもあります。売上が伴わなければ赤字となり、社内の士気を下げる結果になります。
営業代行の成功事例
長野県の飲料メーカーでは、展示会後のフォローを営業代行に任せました。代行担当者が全国の食品バイヤーへサンプル発送を進め、
初年度で20社と新規取引を実現しました。この会社が成功した要因は、代行と自社が連携していた点です。
営業代行任せではなく、常に情報共有を行い、問い合わせ対応や提案資料は自社で用意していました。
つまり、外部の力を借りつつも、中心は自社で握っていたのです。
営業代行の失敗事例
一方、関西の和菓子メーカーは、営業代行に「販路を増やしてほしい」と丸投げしました。代行会社は一応商談を組みましたが、
商品の特徴を理解せず、価格競争中心の提案になりました。その結果、取引条件の合わない問屋と契約してしまい、
利益が残らない状態に。最終的には代行費用も回収できず契約終了となりました。
ここでの失敗は「任せきり」にしたことです。誰に、どんな提案をするのかを自社が把握していなかったことが原因です。
営業代行を上手に使うためのポイント
営業代行を使うなら、まず目的を明確にすることが大切です。「新規開拓の突破口を作る」のか
「既存取引の拡大を狙う」のかによって、依頼内容も変わります。曖昧な依頼は成果を生みません。
また、代行会社選びも慎重に行う必要があります。食品分野に特化しているか、どんな販路実績を持っているかを確認します。
一般商材の営業代行と食品業界は全く違うため、経験の浅い代行業者では結果が出にくいのです。
最も大切なのは「最終的に自社で営業できる体制を整える」ことです。営業代行はあくまで一時的なサポートです。
いつまでも外部依存では会社の力がつきません。展示会や商談会、問い合わせ対応を通して、
少しずつ自社で営業を積み上げていくことが長期的な成長につながります。
自社営業の価値
自社で営業することの最大の利点は、相手との信頼関係を築けることです。社長自身が商品を語れば、
取引先はその情熱を感じ取ります。現場で生まれた声は商品改善にも生かせます。
営業は「売る」だけでなく「聴く」ことが仕事です。現場の声を聞けるのは、代行ではなく自社の人間だけです。
また、営業を通じて社員の意識も変わります。自分たちのつくった商品を自分たちで伝える経験は、社内の誇りになります。
販路拡大とは単に売上を伸ばすことではなく、会社全体が「市場とつながる力」を持つことです。
営業代行は便利な手段のように見えて、最終的には自社営業の重要性を気づかせてくれる存在です。
一時的に頼ることはあっても、最後は自社でやる。この姿勢が長く続く会社をつくります。
まとめ
営業代行には即効性と利便性がありますが、過信は禁物です。食品の営業は「人と人との信頼」で成り立ちます。
短期の数字より、長く続く取引を育てることが真の販路開拓です。外部に頼るのではなく、自社の想いと行動で道を切り開く。
そこに本当の営業力が生まれます。
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