前年同月比で売上が85%まで落ち込んだ時、試算表の数字だけを見ていても解決策は出ません。
原因を「景気の冷え込み」や「市場の縮小」のせいにした瞬間に、自社でコントロールできる改善策は消えます。
売上が落ちたときに多くの経営者が外の状況に目を向けてしまうのは、自社内部の数字の崩れを直視するよりも、
景気のせいにする方が判断を先送りにできるからです。
実際に売上が15%減少している原因は、現場の具体的な数字を確認すればヒントが見つかります。
営業をせめる前に、値引きや新規開拓に走る前に、社長が自ら確認すべき3つの事実を整理します。
1. 上位10社の「発注頻度」と「1回あたりの納品ケース数」の乖離
売上が15%減少したとき、真っ先に確認すべきは「全社的な不振」ではなく「特定の上位顧客における売上の減少」です。
取引が止まった取引先を探すのではなく、継続しているのに「発注が減っている取引先」を特定します。
なぜ社長はここを見落とすのか
営業報告には「A社とは順調です」「納品も続いています」と記載されるからです。
営業担当者にとって、100ケースが80ケースに減った事実は、取引が継続している限り「一時的な変動」として処理され、
社長まで報告が上がりません。
具体的確認行動
- 直近3ヶ月の取引先別売上推移表から、上位10社を抜き出す。
- 「月間の発注回数」と「1回あたりの納品ケース数」を昨年の同時期と比較する。
- 合計金額ではなく、1回あたりの「ケース数」の推移を確認する。
事例
年商5億円の漬物メーカーで、メインのスーパーA社(計80店舗)との取引額が
月間200万円から160万円に落ちていた事例です。
社長が自ら発注データを確認したところ、1回あたりの納品数が全店平均で1.2ケース減っていました。
さらに現場を調査した結果、A社の全店舗で「1商品あたりの陳列スペース(フェース数)」が
3つから2つに削減されている事実が判明しました。
一店舗あたりの納品数が減り、それが80店舗分掛け合わされた結果、月間40万円の欠損となっていました。
社長がやるべきこと: 「もっと売れ」という指示ではなく、「A社のフェース数が減った理由は、
自社の回転率(POSデータ)の低下か、それともスーパー側のSKU(商品数)絞り込みルールによるものか」を
特定させてください。
原因が分かれば、2フェースでも欠品させないための配送サイクルの見直しや、納品提案の修正など、
売上を取り戻すための具体的な行動指示が可能になります。
2. 返品・クレーム報告書の「行間」と「日付の重複」
売上が落ちる予兆は、数字よりも先に「現場の報告」に現れます。
多くの会社では、小さなクレームや返品は現場の担当者レベルで処理され、社長の手元には「重大な事故」しか
報告されません。
なぜ社長はここを見落とすのか
現場には「社長に報告するほどのことではない」という判断が働くからです。
また、食品業界では数ミリのズレや箱の潰れは「よくあること」として処理される慣習があるため、
それが「得意先からの評価下げ」に直結している事実に気づけません。
具体的確認行動
- 過去3ヶ月の「返品伝票」原本と「電話応対メモ」をすべて時系列で並べる。
- 同じ商品、または同じ得意先で、軽微な不満が短期間に重なっていないかを確認する。
事例
売上が前年割れし始めた時期、特定のエリアの店舗から「シールの位置が数ミリずれている」
「外装段ボールの角が少し潰れている」という報告が、1ヶ月に4件続いていました。
製造現場は「検品基準内」と判断し報告しませんでしたが、小売店のバイヤーはこれを管理体制の緩みと見なし、
「取扱い縮小の検討」を進めていました。これが発注制限に繋がっていました。
社長がやるべきこと: 「品質管理を徹底しろ」という指示ではなく、物理的なルールを一つ運用してください。
「返品伝票が発生した際、内容の大小に関わらず、発生から1時間以内に社長へ画像を直接送る」 これだけで、
現場の判断による情報の中断は消えます。社長が事実を把握している状態を作ることが、現場の緊張感を維持させます。
3. 営業車の「走行距離」と「商談時間」の反比例
売上が下がると、営業担当者は「断られる恐怖」を避けるために、移動時間を増やし商談が減り始めます。
なぜ社長はここを見落とすのか
日報には「1日15件訪問」「市場の厳しさを確認」といった言葉が並ぶからです。
社長は営業担当者の「移動による疲れ」を見て、結果が出ないのは景気のせいだと誤認してしまいます。
具体的確認行動
- 営業車の走行距離を確認し、日報の「実際の商談時間」と照らし合わせる。
- 1件あたりの滞在時間が15分以下の訪問が、全体の5割を超えていないか算出する。
- 売上の8割を作る上位3社のバイヤーと、今月「合計何時間」接触したかを集計させる。
事例
売上が15%落ちていたある食品卸では、営業担当者の走行距離が前年比で1.2倍に伸びていました。
中身を精査すると、1日の大半を移動に費やし、10分程度の挨拶を繰り返しているだけでした。
売上の柱である大手スーパーのバイヤーとは、今月は一度も商談ができていない事実が浮き彫りになりました。
営業担当者は売上減少の原因を追求されるのを恐れ、バイヤーの元へ行くのを避けていたのです。
社長がやるべきこと: 「件数を回れ」という指示を禁止し、逆に「1日の移動距離をこれまでの半分に減らせ」と
指示してください。 その代わり、浮いた時間を使って「上位3社のバイヤーと、在庫調整や次期の販売計画について、
1回1時間の商談を週に一度行うこと」をルールにします。
商談の密度を数字で管理することが、売上を戻す最短ルートです。
売上15%減は、上位10社のケース数と返品数、商談時間で説明できる
売上が前年を割ったとき、社長が真っ先にやるべきは、外を見るのをやめて、社内の「数字と事実」を拾い上げることです。
- 上位顧客の発注ケース数の減少を、具体的な数値(フェース数等)で直視する。
- 現場で処理されている返品伝票をすべて掘り起こす。
- 営業の移動を制限し、主要バイヤーとの商談時間を物理的に確保させる。
売上15%減という結果は、これら3つの現場の行動変化でほぼ説明がつきます。
明日、始業直後に自社の数字をこの3つの視点で分解してください。
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