食品会社の資金繰り|売れているのに倒産する会社の現実と社長が最初に確認すべきこと

食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。

夜、工場の機械が止まった後の事務所で、一人で電卓を叩いている社長。
そんな姿を想像しながら、この文章を書いています。

食品会社の社長にとって、一番怖いのは売上が上がらないことではありません。
一番の恐怖は、通帳の残高が目に見えて減っていくこと。そして、明日の支払いができなくなるかもしれないという、
あの喉の奥がヒリヒリするような焦りです。

私も多くの現場を見てきました。立派な経営コンサルタントが言うような、教科書に載っている経営理論なんて、
お腹の足しにもなりません。中小企業の現場で起きているのは、もっと生々しくて、泥臭いお金のやり取りそのものです。

まず、売上が落ちてきたときに社長が最初にぶつかる壁。それが資金繰りです。
売上が減るということは、入ってくるお金が減るということです。当たり前の話ですが、これが本当に恐ろしい。

なぜなら、出ていくお金はすぐには減らないからです。従業員の給料、家賃、機械のリース代、冷蔵庫の電気代。
これらは、売上が半分になっても、容赦なく同じ金額だけ引かれていきます。

ここで多くの社長が焦って、とにかく現金を作ろうとする。無理な値引きをしてでも、在庫を投げ売りする。
利益の出ない仕事でも、入金が早いというだけで飛びついてしまう。

これをやってしまうと、もう戻ってこれなくなります。安売りをすれば、その分だけ会社の体力が削られます。
材料代はかかる、手間はかかる、でも利益は出ない。動けば動くほど、自分たちの首を絞めることになるんです。

次に、意外と多いのが「売上はあるのに、お金がない」という会社です。
これは、伸び盛りの会社や、大きな取引が決まったばかりの会社に本当によくある話です。

食品の世界は、お金の入りと出のタイミングが大きくズレています。スーパーや大きな問屋さんと取引を始めると、
支払いは1ヶ月後、2ヶ月後、遅いところでは3ヶ月後なんてことも珍しくありません。

一方、仕入れ先への支払いや、現場の残業代、運送費は先に払わなければなりません。
1000万円の注文が入ったと喜んでも、その商品を作るための材料代600万円を先に用意できなければ、
会社はパンクしてしまいます。

「売れているのに、倒産する」

これは冗談ではありません。実際に、現場で何度も見てきた光景です。
社長が「やったぞ、大口が決まったぞ!」と社員と万歳三唱している裏で、経理の通帳は空っぽになっている。
これが、食品業界の恐ろしい落とし穴です。

中小企業の資金繰りで、よくある現場の失敗についても触れておきます。
一番の失敗は、社長が「なんとかなるだろう」と根拠のない楽観をしてしまうことです。

「来月はあの入金があるから」「あのお客さんがもっと買ってくれるはずだから」

そうやって、希望的観測で予定を立ててしまう。世の中そんなに甘くありません。入金が遅れることもある。
返品が来ることもある。機械が急に壊れて、修理代が飛んでいくこともある。

資金繰りに困っている社長の多くは、自分の会社の「正確な数字」を見ていません。
通帳の残高だけを見て、一喜一憂している。通帳の残高は「過去の結果」でしかありません。
本当に見なければならないのは、「これからの支払い予定」です。

社長、今すぐ手元のノートに書き出してみてください。
今月、あといくら支払わなきゃいけないのか。
来月、確実に入ってくるお金はいくらなのか。
再来月はどうなのか。

これを1円単位で書き出すだけで、心の霧が少し晴れます。正体がわからないから怖いんです。
いくら足りないのか、いつ足りなくなるのか。それがハッキリわかれば、対策が打てます。

銀行に行くにしても、「なんとなく足りないので貸してください」と言う社長と、
「来月の20日に300万円足りなくなるので、融資をお願いします」と言う社長では、どちらが信頼されるでしょうか。
答えは明白です。

ここで、私が実際に見てきたある社長の話をします。
その会社は、地域で愛されている小さな総菜加工工場でした。
社長は職人気質で、とにかく美味しい総菜を作ることだけを考えていました。

営業が苦手で、言われるがままに安い単価で卸していました。売上はそこそこありましたが、いつまで経っても楽にならない。
社長は「もっと数を売れば、いつか楽になる」と信じて、夜中まで機械を回していました。

私が行ったとき、社長の顔は真っ黒でした。疲れ果てて、目は血走っている。
「伊藤さん、もう限界だ。これ以上、何を頑張ればいいんだ」

私はまず、工場の倉庫を見せてもらいました。そこには、何年も前に作った古いパッケージや、
使い道のない原材料の袋が山積みになっていました。社長は「いつか使うかもしれないから」と言って、捨てられずにいたんです。

私は言いました。
「社長、これは在庫じゃない。現金が腐っているのと同じですよ。これを全部片付けましょう。
そして、仕入れの量を半分にしてください」

社長は驚いていました。「そんなことをしたら、注文に応えられなくなる」と。

実際にはそんなことはありませんでした。今まで「念のため」に多めに仕入れていた分を削るだけで、
毎月の支払いが目に見えて減ったんです。

さらに、利益の出ていない取引先を全部洗い出しました。
手間ばかりかかって、配送費を引いたら赤字になるようなお客さんです。
社長と一緒に頭を下げに行って、値上げをお願いするか、お断りするかを選んでもらいました。

結果として、売上は2割減りました。それでも、手元に残る現金は増えたんです。
無理に動かなくていい。
余計な仕入れをしなくていい。
現場の残業も減った。

半年後、その社長は言いました。
「昔は通帳を見るのが怖くて仕方がなかった。でも今は、次に何をすべきか、数字を見て考えられるようになった」

資金繰りは、魔法ではありません。
かっこいい言葉で飾る必要もありません。
ただ、目の前にある事実と向き合う。それだけです。

社長、もし今夜、不安で眠れないなら、まずは冷蔵庫や倉庫を見てください。
そこにある「お金」を、どうやって現金に戻すか。
それを考えることから始めてください。

見栄を張る必要はありません。
「うちは苦しいんだ」と、仕入れ先に正直に話して、支払い条件を相談するのも社長の仕事です。
銀行に足を運んで、今の現状を包み隠さず話すのも社長の仕事です。

かっこいい社長である必要はありません。
会社を守る、社員を守る、そのために泥水をすする覚悟があるかどうか。
資金繰りの正体は、社長の「覚悟」そのものです。

食品会社は、人を笑顔にする素晴らしい仕事です。
あなたが丹精込めて作ったものを、誰かが「美味しい」と言って食べている。
その笑顔を守るために、まずはお金の問題を片付けましょう。

焦らなくて大丈夫です。
一つずつ、目の前の数字を整理していきましょう。
派手な成功法則なんていりません。
今日よりも明日、通帳の数字が少しでも良くなるように、泥臭く動いていきましょう。

私も、そんなあなたを全力で支えます。
一緒に、この苦境を乗り越えていきましょう。

まずは明日、倉庫の奥で眠っている「現金」を探すことから始めてみませんか。
一歩踏み出せば、景色は必ず変わります。

この文章は、綺麗ではありません。
現場の現実はもっと汚くて、もっと重たいものです。
だからこそ、私は正直な言葉だけを届けたいと思っています。

今夜は、少しでもゆっくり休んでください。
体が資本です。社長が倒れたら、元も子もありません。
明日また、冷静な頭で数字と向き合いましょう。

次は、現場で実際にお金を残すための「仕入れの見直し方」について、具体的にお伝えしたいと思います。
一緒に頑張りましょう。

食品会社の社長が銀行に嫌われる行動|融資が止まる会社の共通点

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