取引先が減り始めたとき、最初にやることは一つです。
全部を守ろうとするのをやめる。残す先を絞って、そこに時間と人を集める。それだけです。
このまま読み進めていただければ、今日の夕方には「どこを残して、どこを手放すか」が見えてきます。
売上が落ちていく、その流れ
取引先が減り始めるとき、最初は小さい変化から始まります。
発注量が少し落ちる。担当者からの連絡が少し遅くなる。「今月は少し控えます」という話が増えてくる。
この段階で多くの社長は「そのうち戻る」と判断します。関係が長いから。先方の都合だから。今まで大丈夫だったから。
ただ、現場ではこの流れのまま戻らないケースが多いです。
3か月経つと、その取引先への売上は前年比で7割ほどになります。6か月後は5割前後まで落ちることもあります。
そして1年後、担当者が替わって「取引条件を見直したい」という話が来ます。
気づいたときには、売上の穴が簡単には埋められないサイズになっていることが少なくありません。
これが食品会社で実際に起きている流れです。
一気に切られるわけではありません。じわじわ減る。だから動くタイミングが遅れやすい。
「まだ取引はある」という状態が続く間に、手が打ちにくくなっていきます。
取引先が「減り始めた」と感じたときには、すでに厳しい局面に入っていることも多いです。
感じる前に少し動く。この意識が重要になります。
全部追うと崩れる、その現実
取引先が減り始めると、社長は動き出します。既存先に顔を出す。電話を増やす。値段を調整する。新しいサンプルを持っていく。
全部に対して、同じようにやろうとします。
ここで一度立ち止まって考えてみてください。
月に30社、40社の取引先に対して、同じ頻度で動ける体制があるか。それだけの人が社内にいるか。
多くの会社では現実的ではありません。
現場ではこうなります。1社の訪問に半日ほどかかる。移動、準備、報告まで含めれば1日使います。
週5日で回れる取引先は10社が目安です。月に40社を同じ熱量で回ろうとすれば、
1社あたりに使える時間は月に半日もありません。
これで関係を深められるか。売上を取り戻せるか。
難しいケースが多いです。やったつもりになって、結果として全部が中途半端になります。
全部追うと、全部の取引先から「あの会社、最近対応が薄くなった」と感じられる状態になります。
大事な取引先への対応も薄くなります。小さい取引先の対応に時間を使っているからです。
結果として、大事な取引先まで離れ始める。これが「全部追ったら全部崩れた」という状態です。
実際にこうなっている会社を何社も見てきました。
社長が迷う、そのポイント
頭ではわかっている社長が多いです。「全部は無理だ」と。「絞らないといけない」と。
それでも動けない。ここには理由があります。
1.長い付き合いだから切れない
10年、15年の取引先。担当者とも顔なじみ。「お世話になった」という気持ちがある。それが判断を止めます。
気持ちは自然なものです。ただ、感情と経営は分けて考える必要があります。
長い付き合いでも、赤字の取引を続ける理由にはなりません。
2.いつか大きくなるかもしれない
今は小さいが、将来性があるかもしれない。そういう期待で持ち続けている取引先があります。
「かもしれない」に今の経営資源をどこまで使うか。ここは冷静に見ておきたいところです。
3.切ったら評判が悪くなる
業界は狭い。取引をやめたら噂になる。そう思って踏み切れない社長は多いです。
誠実に対応すれば、評判が大きく傷つくことはほとんどありません。
問題はやめ方であって、やめること自体ではありません。
4.まだ売上が立っているから
利益が出ていなくても、売上は立っている。だから「取引先」としてカウントし続けます。
売上と利益は違います。売上があっても利益がなければ、その取引は会社の体力を削っている可能性があります。
この4つが、社長の判断を止めています。
どれも気持ちとしては理解できます。間違いではありません。
ただ、これを理由に判断を先延ばしにすると、会社の負担が増えていきます。
残す先と切る先、判断基準はこれです
きれいな基準より、使える基準を出します。今日から使えるものだけ書きます。
【粗利率】
残す:20%以上出ている
切る:10%を切っている、または原価割れがある
【発注の安定性】
残す:毎月ほぼ同じ量が来る
切る:月によってバラバラ、突然ゼロの月がある
【支払い】
残す:期日通り、問題なし
切る:遅延が複数回ある、調整が必要な状態
【対応コスト】
残す:電話・訪問が月1〜2回で回る
切る:週1以上の対応が必要、クレームが多い
【成長性】
残す:発注量が増えている、または増える話がある
切る:2年以上、発注量が横ばいか下落
【代替可能性】
残す:他にない商品・関係がある
切る:他社でも同じものが買える、代替品がある
この6項目を見て、「残す」が4つ以上なら残す。「切る」が4つ以上なら見直す。それだけです。
迷った取引先は、1年の猶予を決めて見ます。1年後に再評価する。猶予なく延々と迷い続けないことです。
利益が出ていない先を残している場合、それは相手を助けているというより、自社の体力を削っている状態になりやすいです。
粗利10%を切っている取引先に、配送コスト・人件費・梱包材を乗せると、手残りはほぼゼロか赤字になります。
売上は立っているが、動くほどに余力が減っていきます。
この状態を「取引先」として持ち続けるか、一度立ち止まって考えることが必要です。
残す先を間違えたときの結果
残す先の選び方を誤ると、どうなるか。
よくあるのがこのパターンです。
規模が大きいから残した。売上が大きいから残した。長い付き合いだから残した。
この3つの理由で判断した結果、利益率の低い大口取引先ばかりが残ります。売上は大きいが、手元にお金が残らない。
さらに、大口取引先は値下げ交渉が強い傾向があります。「他に安い仕入れ先がある」と言われれば、断りづらい。
断ると売上が大きく動くからです。
こうして毎年少しずつ利益が削られていきます。
規模が大きい取引先が悪いわけではありません。問題は、利益を見ずに「大きいから残す」と判断することです。
売上5000万の取引先で粗利率8%なら、粗利は400万です。売上1000万で粗利率30%なら、粗利は300万です。
売上は5倍違うが、利益は大きく変わらない。対応コストと値下げリスクを含めれば、後者の方が安定する場合もあります。
数字で見ないと判断を誤ります。感覚と実態がずれていることが多いからです。
小さい取引に時間を使っている状態
取引先を整理できていない会社でよく見る光景があります。
月に3万円の発注しかない取引先への対応に、月に3〜4時間使っている。
電話対応、見積もり、納品確認、クレーム対応で時間が消えます。
時給換算してみてください。3万円÷4時間=7500円。
この時間の使い方が適切か、一度見直す必要があります。
その4時間を、粗利率の高い取引先への提案に使えば売上は変わります。
新しい取引先を開拓する時間に使えば、次の柱ができます。
小さい取引の対応が多い会社は、社長の時間が最も低い価値で使われている状態になりやすいです。
「小さい取引先でも大事にする」という考え方は理解できます。
ただ、時間とコストが限られている以上、優先順位をつける必要があります。
小さい取引を切るのではなく、対応時間を決める。「この取引先は月1時間以内」と決める。
それ以上かかる場合はやり方を変える。これだけでも時間は確保できます。
現場の動きに落とす
判断基準を出しただけでは動けません。現場でどう動くかを書きます。
1.取引先のリストを全部出す
売上金額、粗利率(わかる範囲で)、対応頻度、最終発注日。この4つを書き出します。1時間あればできます。
2.粗利率が出ていない先に印をつける
10%を切っている先、原価割れの先、値引き対応の先。ここが見直し候補です。
3.対応コストを時間で出す
それぞれの取引先に、月に何時間使っているかを書きます。
4.残す先・見直す先・様子見を分ける
判断基準に沿って分類します。今日中にやることが大切です。
5.見直す先への対応を決める
一気にやめなくても構いません。「今期は継続、来期から縮小」など、期限を決めます。
6.残す先への投資を増やす
時間を集中させる。訪問頻度、提案内容、関係づくり。ここに力を入れます。
今日、何をやるか
読んだあとに動かなければ意味がありません。
取引先リストを出す
利益が出ていない先に印をつける
残す先・見直す先・様子見に分類する
この3つをやれば、会社の実態が見えてきます。
見えれば、次の判断ができます。
取引先が減っている状況は、放置すれば広がります。
今日から整えていきましょう。
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