原材料の値上げで苦しいのに値上げ交渉できない|取引先を続けるか悩む社長へ


食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。

税理士に「値上げしてください」と言われた。でも、現場ではそう簡単にできない。
税理士の先生に言われたことがあると思います。

「原材料が上がっているんだから、価格に転嫁しないといけませんよ」頭ではわかっています。
数字を見れば、そうしなければいけないことは。
でも、取引先の担当者の顔が浮かぶ。長年の付き合いがあります。
「値上げしたい」という言葉が、なかなか口から出てこない。そういう社長が、今、全国にたくさんいます。
社長だけではありません。訪問すると多くの社長から聞くことです。

税理士の先生は正しいことを言っています。数字の上では、値上げしなければ会社が苦しくなる。
でも、税理士は現場にいません。いたら税務的な冷静な判断はできません。
取引先との関係がどういうものか、毎日どんなやり取りをしているか、それを知らないまま「値上げしてください」と言います。

でも社長には、それが値上げのお願いをできない理由があります。
その理由を、一つひとつ見ていきます。なぜ交渉できないのか
「値上げを言い出せない」には、理由があります。きれいごとではありません。

長い付き合いがある10年、20年と取引している相手です。
担当者とも顔なじみです。先方の会社の事情も知っている。こちらの事情も、ある程度わかってくれている。

そういう関係の中で、「値上げしてほしい」と言った瞬間、空気が変わる。そのことが怖い。
感情の話をしているのではありません。実際に、関係が壊れることがある。

長年かけて作ってきた関係が、値上げの話をした一回で、ぎこちなくなる。
それを経験した社長は、次から言えなくなります。だから言えない。切られる不安がある。

売上の半分以上を一つの取引先に依存している会社は、珍しくありません。
地方の中小食品会社では、よくある話です。

そういう状況で、「値上げを要求したら、他を探す」と言われたら、どうなるか。
その取引先が抜けた穴を、すぐに埋められる見通しがない。
新しい取引先を探すには時間がかかります。すぐに同じ量を売れる保証はありません。

その間、従業員の給料は払い続けなければいけない。だから言えない。
数量が減ることを恐れている値上げを認めてもらったとしても、それで終わりではありません。

今度は発注量を減らされることがあります。
「単価が上がったから、こちらも量を調整する」と言われる。
単価が上がって、量が減る。結局、売上は変わらない。あるいは下がる。

それどころか、製造ロットが変わって、かえってコストが上がることもあります。
少量を何回も作るより、まとめて作るほうが効率がいい。量が減ると、その効率が悪くなる。
そういうことが、実際に起きます。だから言えない。

これは意思が弱いのではありません。現場の判断として、そうなるのです。
赤字でも続けてしまう値上げを言えないまま、時間が経ちます。
原材料のコストは上がっている。小麦粉、砂糖、油、卵、梱包材。
ここ数年で、どれも値段が上がっています。

包材も上がっています。輸送費も上がっています。
光熱費も上がっています。工場の電気代、ガス代。

数年前と比べると、明らかに増えています。人件費も上がらざるを得ない。
最低賃金が毎年上がっています。人が集まらないから、時給を上げないと来てもらえない。
設備は古くなって、修繕費がかかる。買い替えたくても、資金がない。
壊れたら修理しながら使い続けている。
でも、売値はそのままです。

計算してみると、その取引先への納品は赤字に近い状態になっています。
あるいは、もうすでに赤字になっている。

それでも続けているのは、なぜか。売上の数字が落ちるのが怖いからです。
取引先を失うのが怖いからです。長年の付き合いを崩したくないからです。気持ちはわかります。

でも、このまま続けると、会社そのものが持たなくなります。
赤字の取引を続けることは、会社を守ることではありません。

毎月、少しずつ会社のお金が減っていきます。気づいたときには、手元に残るものが少なくなっている。
そういう状況に陥っている会社が、今、かなりあります。

「値上げするかどうか」ではなく「この取引を続けるかどうか」ここで、少し見方を変えてみてほしいのです。
税理士の先生は「値上げしてください」と言います。でも、現場では値上げが難しい取引先がある。
値上げを断られたとき、多くの社長は「では仕方がない、このまま続けよう」と考えます。

でも、そこで止まってしまうと、状況は変わりません。
そうなると、考えることは一つになります。「この取引を、このまま続けるのか」
値上げが受け入れられない取引先は、今後どうなるか。

コストはこれからも上がります。売値は据え置きのままです。
その差は、広がるばかりです。

1年後、2年後、その取引先との取引は、今より確実に苦しくなっています。
値上げを断られた取引先との取引を、これ以上続けることが、会社にとって本当にいいことなのか。
そこを考える必要があります。

嫌いになれと言っているのではありません。
感情の問題ではなく、利益の問題として見てほしいのです。
その取引先との取引が、今の売価で成り立っているかどうか。

成り立っていないなら、このまま続けることが会社にとっていいのかどうか。
それを、冷静に確認してほしいのです。

具体的に確認してほしいこと
抽象的な話をしても仕方がないので、具体的に確認できることをお伝えします。

数量を増やせているか
取引先への販売数量は、ここ数年で増えていますか。
3年前と比べて、同じか、減っていませんか。

増えていないなら、その取引先との売上はこれ以上伸びません。
コストだけが上がり続けて、利益は薄くなる一方です。

量が増えない取引先は、会社の売上を支えてくれません。
今の量をキープするだけで、それ以上にはなりません。

もし量が増えているなら、まだ関係を続ける意味があります。
でも、増えていないなら、この先も増える見込みは低い。
そこをまず確認してください。

コストの上昇に見合っているか
その取引先へ納めている商品を、今の原価で計算し直してください。
今の売値で、利益が出ていますか。

3年前、5年前に決めた売値のままになっていませんか。
そのときの原価と、今の原価は違います。
小麦、油、砂糖、包材。
全部上がっています。

3年前に利益が出ていた売値が、今は赤字になっていることがあります。
計算してみると、利益がほとんど残っていない商品があるはずです。
感覚ではなく、数字で確認してください。

1ケースあたり、いくらで作って、いくらで売っているか。
そこから輸送費や人件費を引いたら、いくら残るか。
それを今の原価でやり直してみてください。条件が厳しすぎないか

売値だけを見ていると、見えないコストがあります。
支払いサイトが長い。
60日、90日払いになっていませんか。
その間、こちらは材料費や人件費を先に払っています。
資金繰りが苦しくなります。

返品がある。
売れ残りを返品される条件になっていると、その分がそのまま損になります。
食品は返ってきても、再利用できないことが多い。

納期が短い。
急な注文に対応するために、スタッフを余分に動かしている。

残業が増えている。
その分のコストが、売値に入っていない。

急な変更が多い。
数量の変更、仕様の変更、納品先の変更。
そのたびに現場が動いて、コストが発生しています。

こういった条件がついている取引先は、見かけの売値より、実際のコストが大きくなっています。
条件を含めて、本当に成り立っているかを確認してください。

担当者が変わったとき、関係は続くか
長い付き合いがある、と感じているのは、担当者同士の関係がある場合が多い。
でも、先方の担当者が変わったとき、その関係はそのまま続きますか。

新しい担当者は、コストを見直してくることがあります。
「前の担当が決めた条件だから」と言っても、通じないことがある。
そのタイミングで、値下げを求められることもあります。

長い付き合いが「担当者個人との関係」である場合、会社としての関係は思ったより浅いことがあります。
そこも、確認しておく必要があります。
値上げができない取引先に、何年もつきあうのか

ここまで読んでいただいた社長に、正直にお伝えします。
値上げの交渉をして、断られた取引先がある場合。
または、交渉すら難しい雰囲気の取引先がある場合。

その取引先との関係を、今後どうするかを、真剣に考える時期に来ています。
長いつきあいを大切にしたい気持ちはわかります。
でも、赤字に近い取引を続けることで、会社の体力は削られていきます。

従業員に給料を払う余力がなくなります。
設備を直す資金が出てきません。

新しい取引先を開拓するためのお金がなくなります。
結果として、会社が厳しい状況になる。

それは、従業員にとっても、地域にとっても、いいことではありません。
今の取引先を大切にしたい気持ちはわかります。
でも、その取引先を守ろうとして、会社が倒れてしまったら、何も残りません。

取引先を変えることは、逃げではない
「今の取引先を見直す」と聞くと、逃げているように感じる社長もいます。
「長年お世話になった相手を切るのか」と思う社長もいます。そうではありません。
会社が続かなければ、何も残りません。成り立つ取引をしている会社だけが、10年後も存在できます。

値上げを受け入れてくれない取引先への依存度を少しずつ下げていく。
その代わりに、きちんとコストを理解してくれる取引先との取引を増やしていく。
それは、御社を守るための判断です。

新しい取引先を探すことは、今の取引先を捨てることではありません。
会社が続くための取引の形を、作り直していくことです。

地方の食品会社でも、取引先を変えながら、少しずつ状況を変えていっている会社があります。
一気には変わりません。
でも、少しずつ変えていくことはできます。

まとめ
税理士が「値上げしてください」と言うのは、数字を見ているからです。それは正しい。
でも現場では、値上げの交渉がそう簡単にできない事情があります。
長いつきあい、切られる不安、数量が減る恐れ。

だから多くの社長が、赤字に近い取引をそのまま続けてしまっています。
ここで考えてほしいのは、「値上げするかどうか」ではありません。
「この取引先と、このまま続けるかどうか」です。

数量が増えていない取引先。
今の原価で計算すると赤字に近い取引先。
条件が厳しくて、実際のコストが大きい取引先。

そういう取引先との取引を少しずつ減らして、成り立つ取引先を増やしていく。
それが、今の食品会社の社長に必要な判断だと思っています。
簡単ではありません。時間もかかります。すぐには変わりません。

でも、そこに向けて少しずつ動き始めた会社が、少しずつ変わっています。
夜に一人でこの記事を読んでいる社長に、少しでも参考になれば、と思って書きました。

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