サンプルの送り方で差がつく|食品会社のバイヤー対応で見られていること


地方の食品メーカーが新しい展示会に出展したり、営業活動を行ったりする中で、
バイヤーから「まずはサンプルを送ってください」と言われる場面は多いものです。

社長にとっても、自慢の商品を試してもらえる貴重な機会となります。社内で急いで荷造りをして、宅配便の伝票を貼り、
発送を済ませる。一息ついて結果を待つものの、数週間経っても連絡が来ない、
あるいは丁寧なお断りのメールが届くだけで終わってしまう。このような経験を持つ社長は少なくありません。

販路開拓の現場で多くの相談を受けていると、サンプルを送った後の結果には、
商品そのものの品質とは別の要因が大きく関係していることに気づきます。
バイヤーが荷物をあけた瞬間に、その会社と取引をするべきかどうかの判断が始まっています。

サンプルだけ送っていませんか

展示会や商談会が終わった後、バイヤーの手元には全国の食品会社から大量の荷物が届きます。
その中で、驚くほど多くの会社が商品だけを箱に詰めて送っています。プチプチなどの緩衝材に包まれた商品が、
段ボール箱にそのまま入っている状態です。

送り状の依頼主欄に会社名が書かれているため、どこの企業から届いたのかは分かります。
それ以上の情報が何も伝わってきません。商品を開けたバイヤーは、これがどの展示会で出会った社長のものか、
どのような経緯で送られてきたのかを、自分の記憶や名刺の山から手探りで探すことになります。

地方の小規模な食品メーカーが大手や中堅の流通業者と新規取引を目指す場合、商品力はもちろん大切です。
それと同じくらい、取引先として信頼できる企業かどうかが重視されます。
商品だけがぽつんと入った箱を受け取ったバイヤーは、業務の粗さや配慮の不足を感じ取ってしまいます。

挨拶文を一枚入れる

サンプルを送る際に、挨拶文を一枚添えることは、営業活動における基本的な礼儀です。
この一枚があるだけで、荷物を受け取った相手の印象は大きく変わります。

挨拶文に書くべき内容は、決して複雑なものである必要はありません。
「先日の展示会では弊社ブースにお立ち寄りいただき、誠にありがとうございました」という御礼から始めます。

その上で、「ご要望いただきました〇〇のサンプルをお送りいたします。
御社のお客様に喜んでいただける味に仕上がっておりますので、ぜひご賞味ください」といった、
簡潔なメッセージを添えます。

パソコンで作成した文章であっても、あると無いとでは大違いです。社長が直筆で一言、
「お忙しいところ恐縮ですが、ご意見をいただけますと幸いです」と書き添えてあれば、
バイヤーの目にも留まりやすくなります。挨拶文は、単なる紙切れではなく、
遠方にいるバイヤーに対して会社の姿勢を伝える最初の道具になります。

名刺と商品資料を同封する

荷物を受け取ったバイヤーが、その場ですぐに試食できるとは限りません。
数日後、あるいは来週になってから箱を開けることもあります。
その際、誰宛てに連絡をすればよいのかがすぐに分からないと、それだけで対応が後回しになる原因になります。

挨拶文と一緒に、担当者や社長の名刺を必ず同封しておきます。名刺が添えられていれば、
バイヤーは試食した直後に電話をしてみようと、次の行動にすぐ移ることができます。

名刺と同時に不可欠なのが、商品資料です。商品の原材料、内容量、賞味期限、保存方法、
卸価格や希望小売価格が書かれたれた資料(FCPでもよい)が同封されていると、
バイヤーはその場で自社の売場に並べたときのイメージを組み立てることができます。

味は良いけれど価格や規格が分からないという状態では、バイヤーは次のステップに進むための判断ができません。
必要な情報を不足なく送ることが、商談を円滑に進める鍵となります。

会社案内も営業ツールになる

商品資料に加えて、会社案内を同封することも、販路開拓において有効な手段です。
バイヤーは商品だけを見ているわけではありません。取引先として安心できる会社かも見ています。

小規模な食品メーカーの場合、どのような設備で、どれくらいの規模の人数で作っているのか、
衛生管理はどのように行っているのかという点が、取引を開始する上で心配になることがあります。

立派なパンフレットである必要はありません。A4用紙にまとめた会社概要や、工場の様子、創業の経緯、
社長のものづくりに対する想いが伝わる資料があれば十分です。

会社案内を見ることで、バイヤーは「この会社は地域に根差して真面目に食品を作っているのだな」
「これくらいの規模であれば、急な大量注文には前もって相談が必要だな」といった、
具体的な取引のシミュレーションを始めることができます。商品の背景にある会社全体の姿を見せることが、
信頼関係の構築につながります。

梱包の丁寧さも評価される

サンプルを入れる箱の選び方や、中身の詰め方、テープの貼り方といった梱包の仕上がりにも、注意を払う必要があります。
輸送で箱の中で商品が動いてしまい、ラベルが汚れたり、容器が変形したりした状態で届くケースがあります。

箱を開けたときに、商品がきれいに並んでおり、緩衝材できちんと埋められていると、
それだけで受け手は気持ちが良いものです。ガラス瓶の商品であれば割れないように二重に保護する、
冷蔵や冷凍の品物であれば冷気が逃げないように発泡スチロールを使用するなど、
商品に合わせた適切な梱包が求められます。

反対に、サイズが合わない大きすぎる段ボールに新聞紙を適当に詰めたような梱包では、
商品の価値まで低く見えてしまう恐れがあります。梱包の丁寧さは、そのまま自社の商品を大切に扱っているか、
顧客に対しても丁寧な出荷を行っているかという、業務全体の質のとしてバイヤーに受け止められます。

バイヤーの机には複数のサンプルが並んでいる

バイヤーのデスクには、毎日のように全国各地からサンプルが詰まった段ボール箱が届きます。商談期間中ともなれば、
机の上や周囲には、同業他社から送られてきた類似商品の箱がいくつも並ぶことになります。

バイヤーは、それらの荷物を一つずつ開封し、中身を確認していきます。数ある荷物の中で、ただ商品が転がっている箱と、
挨拶文、名刺、見やすい資料があり、ていねいに梱包された箱が並んだとき、どちらの企業に対して仕事がしやすそうだと
感じるかは明白です。

他社と同じような優れた商品を製造していても、発送の段階で差がついてしまうのは非常にもったいないことです。
競合の中で、自社を選んでもらうための工夫は、商品の味を改良することだけでなく、荷物がバイヤーの机に届いた
瞬間の見え方を整える部分から始まっています。

サンプル発送には会社の文化が出る

荷物の送り方という一連の作業を見ると、その会社の仕事ぶりが案外わかります。社長が普段から従業員に
どのような指導をしているかが、はっきりと表れます。

指示された商品だけをただ箱に詰めて送る会社なのか、それとも「このサンプルを受け取ったバイヤー様が困らないように」
と考えて資料を添える会社なのか。日頃から細かいことへのこだわりや、
顧客視点のあり方が、サンプル発送という小さな業務に凝縮されます。

社長の考え方が社内に浸透しており、従業員一人ひとりが丁寧な仕事を心がけている会社は、
荷姿一つをとっても端正な印象を与えます。バイヤーはそうした細かい部分を観察しながら、
これから長くビジネスを共にするに足る組織であるかどうかを見極めています。商品を通じて、
会社の文化そのものが評価されています。

返事が来ない原因は商品だけではない

サンプルを送った後に連絡が途絶えてしまうと、「うちの商品の味が口に合わなかったのだろうか」
「価格が高すぎたのだろうか」と、商品そのものに原因を求めてしまいがちです。

私も支援の現場で、バイヤーから「商品は良かったけれど、価格も規格も分かる資料が何もなかったから、
次の検討に進めようがなかった」という本音を聞いたことがあります。

実際の現場では、味が悪かったからではなく、連絡をするための情報が足りなかった、
必要な資料が揃っていなくて検討が面倒になった、梱包が雑で実際の物流に不安を感じた、
という理由で見送られているケースが多々あります。

バイヤーも多忙な日々を送っているため、わからないことを電話やメールで問い合わせてくれることはないです。
情報が不十分なサンプルは、そのまま検討の対象外として処理されてしまいます。

返事が来ない原因が商品力以外にあるとすれば、それは非常にもったいないことです。送付時の準備を徹底することで、
商談が途中で止まってしまうリスクを大幅に減らすことができます。

まとめ

地方の食品メーカーにとって、販路開拓は会社の将来を左右する重要な取り組みです。
サンプル発送は単なる荷物の発送ではありません。商談の一部です。

商品が良いことは大前提です。その上で、同封する資料や梱包の状態も見られています。
挨拶文、名刺、仕様書、会社案内を揃え、崩れないように丁寧に箱に詰める。
これらの作業は、特別なコストをかけずとも、明日からの業務ですぐに実践できることです。

小さな気配りの積み重ねが、バイヤーに安心感を与え、次の具体的な商談への扉を開くことになります。
自社の発送作業がどのようになっているか、一度確認してみてはいかがでしょうか。

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