自社ブランドの強化に乗り出すべきか、それとも他社からの製造受託(OEM)を増やすべきか。
小さい食品会社の社長にとって、これは会社の未来を左右する重大な決断です。
食品業界では、原材料費やエネルギーコストの高騰が続いており、限られた経営資源をどこに集中させるかは
死活問題と言えます。「自社ブランドで売れる商品を作りたい」という熱い思いがある一方で、
確実な数量が見込めるOEMも経営の安定という意味では非常に大切です。
この記事では、食品会社の社長が自社ブランドとOEMのどちらを選ぶべきか、あるいはどう組み合わせるべきか、
判断する5つのポイントを分かりやすく解説します。
自社ブランドとOEMの違い
判断基準を見る前に、まずは両者の基本的な特徴を整理します。
自社ブランド(自社商品)とは
自社で商品の企画、開発、製造を行い、自社の名前や商標で販売する形態です。価格の決定権が自社にあるため、
売れれば大きな利益をもたらしますが、在庫リスクや販売の責任をすべて自社が負うことになります。
OEM(製造受託)とは
取引先(小売店や通販など)の仕様に基づいて、商品の製造のみを請けおうものです。契約内容によりますが、
販売リスクをおさえやすいことが特徴です。一方で、価格の主導権は発注側にあるため、利益率が低くなりがちです。
食品会社が持続的に成長するためには、この2つの内容を正しく理解し、自社の現状に合わせて選択していく
必要があります。
判断ポイント① 営業力
1つ目のポイントは、自社に「売る力」がどのくらいあるかです。
自社ブランドには能動的な営業が必須
自社ブランドを選ぶ場合、優れた商品を作るだけでは売れません。スーパーや百貨店のバイヤーに認めてもらうための
営業活動が不可欠です。 具体的には、スーパーマーケット・トレードショーなどの大型展示会への出展や、
バイヤーとの個別商談会、商品の魅力を伝える販促ツールの作成などが挙げられます。
こうした活動を継続的に行う営業体制やノウハウが自社にあるかを見極める必要があります。
営業担当者が不足している場合、せっかく開発した商品が売れずに倉庫に眠ったままになるリスクがあります。
OEMは相手の販売力を活用できる
自社に営業マンが少ない、または販路開拓の経験が浅い場合は、OEMが有力な選択肢になります。
販売は発注元の企業が担当するため、自社は「作るプロ」として製造に専念することができます。
判断ポイント② 生産設備・製造能力
2つ目のポイントは、工場の稼働状況と製造ラインの特性です。
工場の稼働率を上げるためのOEM
製造業において、工場の稼働率低下は固定費の負担を重くする原因になります。自社ブランドの売れ行きに波があり、
機械や人員が余っている時期があるなら、OEMを受け入れることで工場の稼働率を安定させることができます。
まとまった数量を定期的に製造できれば、原材料の仕入れコストを抑えるスケールメリットも生まれます。
設備投資のリスク
自社ブランドが急激に売れた場合、既存の設備だけでは対応できず、新たな設備投資が必要になることがあります。
設備を導入した後にブームが去ってしまうと、多額の負債だけが残るリスクがあります。
現在の設備能力でどこまで対応できるのか、冷静な計算が必要です。
判断ポイント③ 利益率とバイヤーの評価
3つ目のポイントは、単なる利益率の比較ではなく、販路開拓におけるバイヤーの視点を含めた評価です。
経費と回収のバランス
自社ブランドは、製造原価に対する粗利益率は高くなりますが、パッケージデザイン費や展示会出展費など、
販売経費が多く発生します。一方のOEMは薄利多売になりがちですが、販促費の負担がなく、
売上の予測が立てやすい点が強みです。
バイヤーは「商品力と供給体制」を総合的に見ている
ここで重要なのは、流通のバイヤーは「自社ブランドだから」「OEMだから」という理由だけで
商品を評価するわけではない、ということです。
バイヤーが商談で重視するのは、店舗の売り場で売れるだけの商品力があるか、そして注文に対して欠品なく安定して
納品できる供給体制があるか、という総合的な信頼関係です。
自社ブランドであっても供給が不安定ならバイヤーは敬遠しますし、OEMであっても確かな製造技術と価格対応力が
あれば、非常に高い評価を得て長期的な取引につながります。自社の体制がどちらの期待に応えられるかを考えることが、
販路開拓の成功には不可欠です。
判断ポイント④ 将来の経営方針
4つ目のポイントは、5年後、10年後に会社をどうしたいかという社長自身の経営ビジョンです。
地域に根ざしたブランド企業を目指すか
「自社の名前を全国に広めたい」「地元の原材料を使った特産品で認知度を高めたい」という思いが強い場合は、
自社ブランドの育成に挑戦すべきです。ブランドの認知度が上がれば、会社全体の信用力が高まり、
採用活動などにも好影響を与えます。
技術力を持った「黒衣」として生きるか
「表舞台に出るよりも、独自の製造技術や衛生管理を武器に、他社を支える存在になりたい」という方向性も、
立派な経営戦略です。特定の製法や、小ロット対応ができるなど、他社に真似できない強みがあれば、
OEMの依頼が絶えない優良企業を目指すことができます。
判断ポイント⑤ 自社に最適なバランスの選択
5つ目のポイントは、どちらか一方だけに絞るのではなく、自社にとって最適な比率を見つけるということです。
実際の食品業界を見渡すと、OEMの受託一本に特化して高い利益を上げている会社もあれば、
独自の自社ブランドだけで熱烈なファンを掴んでいる会社もあります。また、双方を組み合わせている会社も
少なくありません。
状況に合わせた比率の組み立て
大切なのは、他社の成功事例をそのまま真似るのではなく、自社の経営資源に合わせて進むことです。
例えば、工場の安定稼働を最優先する時期であればOEMの比率を高め、製造ラインに余裕があり、
新しい市場へ挑戦したい時期であれば自社ブランドの開発に比重を置く、といった柔軟な判断が求められます。
それぞれの長所をどう活かすかは、各企業の現在の状況によって全く異なります。
まとめ
自社ブランドを展開することが正しく、OEMは下請けだから避けるべき、というような単純な話ではありません。
どちらの形にも、食品会社の経営を支えるための明確な役割があります。
食品会社の販路開拓支援を行う中で、「自社ブランドを作ったものの売り先がない」「OEMだけでは将来が不安」という
相談を受けることがあります。
大切なのは、自社ブランドかOEMかという二者択一ではなく、自社の強みを理解し、売り先まで含めて経営を
考えることです。
最適な答えは、決して一律ではなく、会社の置かれている状況によって異なります。
自社の強みとリスクを天秤にかけ、まずは現在の比率が自社にとって最適かどうかを見直すことから始めてみては
いかがでしょうか。
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