値上げできないときどうする|食品会社の社長が今すぐ決める3つの判断

食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。

コストが上がっているのに値上げができない。この状態が続くと、利益は確実に減ります。

①結論から言います。
値上げをお願いしても通らない。価格を上げられない。この状態が続くと利益は確実に減ります。
利益が出ない商品を売り続けるのは経営ではありません。値上げが通らないなら、選択肢は3つしかありません。

売場から撤退する
売り先を変える
商品をリニューアル

赤字は放置できません。どれかは決めないと会社は持ちません。ここを先に決めることが経営判断です。

②状況
今の食品業界はかなり厳しい状態です。
毎日、厳しい内容の相談があります。

原材料費、光熱費、物流費が同時に上がっています。原価率は数年前より大きく悪化しています。
売上があっても利益が残らない。預金が毎月減っていく。この状態が続いている会社が増えています。

役員報酬を削って資金を回しているケースも多いです。それでも改善しない場合は、構造的に赤字になっています。
社長個人の資産を切り崩して会社を支えるのは、持続可能な経営ではありません。

現場はすでにコストを削り切っています。これ以上の改善は難しいところまで来ています。
ここでさらに無理をさせると、人が辞めるか品質が落ちます。一度失った熟練の従業員や、一度傷ついた商品の信頼を取り戻すには、
値上げで得られる利益以上のコストがかかります。

それでも値上げを切り出せない。断られるのが怖くて、バイヤーに言えない。この状態が続いています。
このまま続けると、資金が減っていきます。月次で見ればはっきり出ています。

③やってはいけないこと
焦って動くと、状況はさらに悪くなります。以下の4点は、経営をさらに圧迫する要因となります。

お願い営業
「苦しいので少しだけ上げてください」と頼むやり方です。これは交渉ではありません。
バイヤーは安く仕入れるのが仕事なので、通りません。一度お願いをして断られると、対等なビジネスパートナーとしての立場を失い、
その後の交渉はさらに難しくなります。

中途半端な妥協
本当は30円必要なのに10円で止める。このやり方では赤字は残ります。10円通ったとしても意味がありません。
その後に残りの20円を上げるのはさらに難しくなります。手間とリスクをかけて、赤字を継続させるだけの結果に終わります。

待ちの姿勢
大手や世の中の流れを待つ。この間にもお金は減ります。待って解決することはありません。大手が動く頃には自社の体力がなくなり、
交渉の席に立つ気力すら奪われている可能性があります。
銀行に言われるまま事業を縮小すると復活が難しくなります。

現場に無理をさせる
これ以上のコスト削減を現場に求める。すでに限界です。無理をさせると人が辞めます。求人広告を出しても人が集まらない今の時代、
欠員は製造ラインの停止に直結します。結果として採用や教育のコストが増え、利益をさらに圧迫します。

④判断(3つ)
値上げが通らないなら、この3つのどれかを決めます。

  1. 売場から引く
    利益が出ない商品はやめます。

売るほど現金が減るかどうか
この価格では続けられないと伝えます。無理ならいつまでで止めるかをはっきりさせます。期限を決めないと話は進みません。

やめると売上は一時的に落ちます。ただし赤字は止まります。資金は安定します。まずは止血が先です。
ここをやらないと次の手が打てません。空いたリソースを利益が出る仕事に振り向ける準備をしてください。

  1. 売り先を変える
    今の取引先にこだわらない判断です。

価格しか見ていないかどうか
既存はそのままにして、新しい販路を探します。自分で価格を決められる場所を優先します。百貨店、専門店、直販などです。

新しい取引先はすぐに結果が出るわけではありません。ただし動かない限り何も変わりません。
同じ相手と同じ話を続けても結果は変わりません。自社の商品の価値を正当に評価してくれる、相手とだけ付き合う決断が必要です。

  1. 商品を作り直す
    今のままでは売れないなら、商品を変えます。

価格イメージが固定されているかどうか
配合、内容量、包材を見直して新商品にします。利益が確実に残る設計にします。

少し変えるのではなく、別の商品として出し直すことが重要です。これで価格の比較をリセットできます。
ここを中途半端にやると、バイヤーに見透かされて失敗します。抜本的な見直しが必要です。

⑤具体例
水産加工会社の事例です。

社長:魚の仕入れが上がりました。50円上げさせてください。
バイヤー:無理です。上げたら売れません。
社長:このままだと赤字です。続けられません。
バイヤー:なんとかならないですか。
社長:これ以上は無理です。値上げできないなら来月でいったん止めます。

この会社は実際に納品を止めました。

その後、空いた製造ラインで高単価の商品を作りました。家庭用の日常品から、贈答用の商品に切り替えました。
売り先もスーパーから専門店や自社通販に変えました。

売上は一時的に下がりましたが、利益は大きく改善しました。1個あたりの粗利が増えたことで、
少ない販売数でも経営が成り立つようになったのです。結果として資金繰りは安定しました。

同じような動きをした会社は他にもあります。共通しているのは「やめる判断」を早くやっていることです。
決断が遅れるほど、手元の現金が失われ、次の施策に投資する体力がなくなります。

⑥社長の経営判断
値上げができない原因のひとつは、社長の経営判断です。

「この取引を失いたくない」「長年の付き合いがあるから」という感情が判断を止めています。赤字の商品を作り続けるのは、
経営ではなく資産の切り崩しです。

価格を上げるか、やめるか、売り先を変えるか
このどれかを決めないといけません。

一番危険なのは、何も決めないまま「とりあえず」で続けることです。時間が経つほど資金は減り、取れる選択肢は少なくなります。
最後には、自分で決めることすらできなくなります。

会社を残し、従業員の生活を守るために、今すぐ動く必要があります。数字を見て、経営者として判断をしてください。

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