「見積が高い」と言われたら|食品会社が先に確認するべきこと

うちの商品、味には自信があるし、原材料にもこだわっている。
でも、バイヤーに見積を出した瞬間に「高いね」の一言で終わってしまう……。

小さな食品会社では、こうした悩みは珍しくありません。百貨店や高級スーパー、食品専門店、
あるいは催事や新しい帳合の開拓へ動いている社長ほど、この価格の壁にぶつかりがちです。

ここで一番避けたいのは、焦って単純な値下げに走ることです。一度下げた価格を元に戻すことは非常に困難ですし、
小さな会社が利益を削れば、経営が苦しくなります。

バイヤーが口にする「高い」という言葉の意味は、必ずしも商品の絶対的な金額を下げろということではありません。
商談の現場で高いと言われたときに、社長が最初に確認すべき現実的なポイントを、
現場の目線で具体的に解き明かしていきます。

よくある商談の場面:なぜ、その「高い」は起きたのか

地方のあるこだわり大豆加工品メーカーの社長が、都市部のスーパーのバイヤーに商談へ行ったときによくある光景です。

社長:「当社の湯葉は、地元産の高級大豆を100%使用し、職人が一枚ずつ手すくいしています。
ですから、1パック卸値350円、店頭想定価格は500円でお願いしたいです。味は間違いありません」

バイヤー:「うーん、確かに美味しいね。でも、うちの売場だと500円の湯葉はちょっと高いな。もう少し安くならない?」

社長:「(やっぱり高いか……)では、320円ではいかがでしょうか?」

バイヤー:「それでもちょっと厳しいかな。また検討させて」

味は良いのに、なぜか商談が決まらない。こうした場面でおちいりがちな問題があります。
社長は味の良さとこだわりを伝え、相手の反応を見て価格を下げようとしました。

一方で、バイヤーの頭の中では、味のことだけでなく「この賞味期限で、このロットと価格で、うちの店の売場に
並べたときに本当に売り切れるのか?」「物流費を引いたら、店にどれくらい利益が残るのか?」という計算をしています。

バイヤーが言う「高い」の裏には、価格そのものだけでなく、「取引条件が見合っていない」という意味が
隠されていることが少なくありません。

小さな食品会社が商談で陥りがちな失敗

営業に悩む食品会社が、商談でついついやってしまいがちな共通の傾向があります。

  1. 「商品のこだわり」だけで押し切ろうとする 「無添加だから」「手作りだから」「地元の素材だから」という説明は、
    バイヤーにとっては聞き慣れた言葉です。こだわりがあるのは、今の時代は前提条件。バイヤーが知りたいのは、
    「それをいくらで、どうやって売るのか」という商売の具体策です。
  2. 原価に「希望の粗利」を乗せただけで見積を作る 自社の製造原価に、自社が欲しい利益を乗せて、
    そのまま見積書を書いていないでしょうか。相手の流通ルート(卸、小売)がそれぞれ必要とする取り分を考慮せずに
    価格を決めると、店頭に並んだときに、売場の相場から大きく浮いてしまう原因になります。
  3. バイヤーに「売り方」を委ねてしまう 「良いものを作ったので、あとはお店で上手に売ってください」という
    スタンスでは、バイヤーは動きにくいのが現実です。バイヤー自身も日々の業務に追われ、多くの提案を受けています。
    売り方の提案がない商品はリスクを感じやすいため、手っ取り早く断る理由として「高い」と言われてしまいます。

「高い」と言われたときの確認ポイント

バイヤーに価格を指摘されたら、見積を書き直す前に、以下の6つの取引条件を確認してみてください。
どこかに、価格を下げずに解決できる糸口があるはずです。

  1. ロット(発注単位)
    「1ケース24個入り、最低3ケースから発注してください」となっていませんか。
    小規模な店舗やこだわり食品店にとって、一度にまとまった数が届くのは在庫リスクになります。
    「1ケースの入り数を減らし、少数から出荷可能」に変更するだけで、「それなら、この価格でも試してみよう」となる
    ケースは多々あります。
  2. 物流費と配送ルート
    見積価格は「運賃込み」ですか、それとも「運賃別」ですか。地方からの発送の場合、
    運賃の負担が価格を大きく圧迫します。自社だけで運賃をすべて抱え込んで見積を高くするのではなく、配送の頻度や、
    ほかのお店への共同配送網を利用できないかなど、物流面の工夫を検討する必要があります。
  3. 賞味期限
    日数に厳しい基準を設けている取引先もあります。バイヤーは「この賞味期限でこの価格だと、売り切る前に期限が
    迫ってしまうのではないか」と警戒して「高い」と言っている可能性があります。
  4. 競合との比較
    すでに並んでいる類似の商品を事前に調査しましたか。ライバルより高い価格で提案する場合、
    「その差額に見合う理由」を明確に説明できなければいけません。容量、パッケージの利便性、用途の違いなど、
    具体的な違いを示す必要があります。
  5. 売場への具体的な提案
    ただ商品を持っていくのではなく、「お店のどの売場に、どの商品と並べて置くか」まで想定していますか。
    例えば、「関連する定番食材の横に、この特製調味料を並べることで、ついで買いを促せます」といった、
    売場全体の売上を作る視点があるかどうかが大切です。
  6. 容量について
    1パックあたりの見積が高すぎると言われた場合、中身の容量を少し調整して、
    手に取りやすい価格帯で提案し直すという方法があります。単価そのものは変わらなくても、
    消費者が買いやすい「お試し価格」にすることで、バイヤーが納得することはよくあります。
    バイヤーが気にしているのは、単に価格が高いことではありません。「売れ残って廃棄になり、
    お店にマイナスをもたらすこと」です。「この価格であっても、こういう理由でしっかり売り切れます」という
    根拠を示せているかどうかが、最大の鍵となります。(容量の変更はコストがかかりますので注意が必要です)

条件を工夫して価値を伝える、商談の改善例

先ほどの湯葉メーカーの場面を、取引条件を見直した上で捉え直してみましょう。

社長:「当社の湯葉は1パック卸値350円、店頭500円でのご提案です。確かに、いま売場にある定番品と比べると、
高く感じられると思います」

バイヤー:「そうだね、うちのお客さんが500円を出してくれるかな」

社長:「そこで、今回は1ケースの入り数を24個から12個に減らし、小ロットで納品できるようにいたしました。
お店での在庫リスクを抑えられます。さらに、この湯葉は非常に濃厚ですので、醤油ではなく『塩で食べる食べ方』を
提案する手作りのPOPをお付けします。週末のプチ贅沢需要として、お酒コーナーの近くに少しだけ並べてみて
いただけませんか?」

バイヤー:「なるほど、12個ならリスクも少ないし、その見せ方なら試してみる価値はあるね。
一度、1ケースだけ入れてみようか」

価格は変更していません。しかし、「ロットを小さくして相手のリスクを減らす」「売り方の提案を添える」という
取引条件の工夫によって、バイヤーの懸念を解消し、前向きな検討を引き出すことができました。

売れない原因を「価格」だけで判断しないために

バイヤーから「高い」と言われたとき、それは商談の終わりではなく、お互いの条件をすり合わせる始まりです。

商品の価格は、単なる数字ではありません。ロット、物流、賞味期限、売場での見せ方といった、
あらゆる取引条件が複雑に絡み合って決まるものです。自社の商品がなぜその価格なのか、
そして相手の店にどんな利益をもたらすのかを、具体的な条件とともに説明できるように準備しましょう。

見積書やFCPシートを見直すだけでも、商談の伝わり方は変わります。価格を下げる前に、まずは取引条件や提案内容を
一度整理してみてください。

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