売れる社長は「ゼロ回答」をしない


「できません。」
この一言で終わる商談があります。

もちろん、本当に対応できない仕事はあります。設備がない、人手が足りない、技術的に難しい、採算が合わない。
そのような理由で断らなければならないことは、どの会社にもあるでしょう。

私が問題だと感じているのは、「できません」という結論ではありません。
「できません。」で思考まで止まってしまうことです。

これが「ゼロ回答」です。

販路開拓では、新しい販売先、新しい商品、新しい企画など、これまで経験したことのない相談を
受けることがあります。

そのような相談に対して、「前例がないから」「設備がないから」「人手が足りないから」と、
すぐに結論を出してしまう社長がいます。

その気持ちはよく分かります。

中小企業は限られた人員と設備で日々の仕事を回しています。新しいことへ挑戦するには勇気も必要です。
そこで話が終わってしまえば、新しい販路もそこで終わります。
相談したバイヤーは、もう御社には頼みません。

売れている会社は考え方が違います。

「この内容は難しいですが、この商品なら対応できます。」
「現在の設備では難しいですが、この範囲なら可能です。」
「この方法なら一緒に検討できます。」

すぐに答えが出なくても、「何か方法はないか」と考えます。
その姿勢が商談を続けることにつながります。

販路開拓は、最初から正解が決まっている仕事ではありません。
お互いに話し合いながら可能性を探していく仕事です。

相談する側も、完成した答えを求めているわけではありません。

「この会社なら何ができるだろう。」
「どんな技術を持っているのだろう。」
「別の方法はないだろうか。」

そんな期待を持って相談しています。

だからこそ、「できません。」だけで終わる会社と、「これならできます。」と提案する会社では、
相手に残る印象が大きく変わります。

『できません』で思考が止まる会社では、新規顧客開拓は難しいです。

多くの社長とお会いする中で感じるのは、売れている会社ほど「どうすればできるか」を
考える習慣があるということです。

もちろん、何でも引き受けるわけではありません。

利益が出ない仕事や、自社の品質を維持できない仕事まで受けることは、会社にとってマイナスです。
「できません」と言う前に、一度だけ立ち止まっています。

既存の商品を応用できないか。
仕様を少し変更できないか。
別の商品なら提案できないか。
協力会社と一緒なら実現できないか。

そのように考える時間をつくっています。
この違いは小さなことのように見えます。
ところが、数年たつと大きな差になります。

新しい販路は、一つの提案から始まることがあります。
新しい商品は、一つの相談から生まれることがあります。

長く続く取引も、「まずは話を聞いてみよう」という姿勢から始まることがあります。
反対に、ゼロ回答が続けば、新しい相談そのものが来なくなります。

「あの会社に相談しても無理と言われる。」
そう思われてしまえば、次のチャンスは別の会社へ流れてしまいます。

これは非常にもったいないことです。
社長の役割は、今ある商品を売ることだけではありません。

会社の未来を考えることです。
新しい市場へ挑戦するのか。
新しい商品を開発するのか。
新しい取引先と関係を築くのか。

その方向性を決めるのは社長です。だからこそ、「できる・できない」で終わるのではなく、
「どうすればできるか」という視点が欠かせません。

中小企業は、大企業と同じ経営資源を持っているわけではありません。
設備、人材、資金、すべてに限りがあります。

だからこそ、熱意や知恵が競争力になります。
できない理由を探すことは難しくありません。

設備がない。
人がいない。
経験がない。
前例がない。
お金がない。

理由はいくらでも見つかります。
「できる方法」を探すには時間も労力も必要です。

それでも、その積み重ねが会社の未来を変えていきます。
社長の仕事は「できません」と説明することではなく、「会社の可能性を広げること」だと考えています。

最終的な結論が「今回は対応できません」になることもあるでしょう。

それでも、その結論に至るまで真剣に方法を考えた会社と、最初からゼロ回答で終わった会社では、
相手に残る印象はまったく違います。

「この会社は一緒に考えてくれる。」
そう思ってもらえれば、次の相談につながる可能性は高まります。

売れる社長は、何でも引き受ける社長ではありません。
会社の強みと限界を理解したうえで、「何ならできるか」を最後まで考える社長です。

もし、新しい相談を受けたとき、「できません。」という言葉が頭に浮かんだら、一度だけ考えてみてください。
「何ならできるだろう。」

その問いかけが、新しい販路をつくり、新しい商品を生み、会社の未来を変えていきます。


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