原油高騰で利益が出ない食品会社の社長へ 値上げできないときの対応

食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。

「コストが上がっているのに、値段が上げられない。」

今、多くの中小食品会社の社長から、まったく同じ言葉を聞きます。
この記事では、同じ状況に置かれながら「すぐ対応できる会社」が何をしているか、具体的に書きます。

原油高騰が食品会社に影響すること

まず、現実を整理します。原油価格が上がると、食品会社には少なくとも3つのルートでコストが増えます。

1つ目は物流費です。運送会社は燃料サーチャージを上乗せしてきます。これは交渉の余地がほとんどありません。
「次の契約更新まで待ってほしい」と伝えても、「燃料費の上昇分は即時反映」という条件に
変わっているケースも多いです。

2つ目は包装資材費です。プラスチックは石油由来ですから、原油高騰の影響をまともに受けます。
フィルム、トレー、容器、ラベル。どれも少しずつ上がっています。
1品目では小さな差でも、SKU数が多い会社ほど積み上がると大きな数字になります。

3つ目は製造コストです。工場の光熱費が上がります。冷蔵・冷凍が必要な食品を扱っている会社は、
電気代の上昇が直撃します。

つまり、何もしなければ売上は変わらないのに、利益だけが削られていく状態が続きます。
これは時間がたてばたつほど、財務的なダメージが積み上がっていきます。

値上げできない現実

「値上げすればいい」という話は、現場では通じません。

大手スーパーや量販店との取引では、「価格改定は年1回の交渉時のみ」という慣習があります。
タイミング以外での値上げ交渉は、売場を外されるリスクとセットです。「他にもっと安く入れてくれる会社がある」と
言われたら、返す言葉がありません。

帳合との取引でも状況は似ています。値上げを申し入れると「他社と比べますね」という反応が返ってきます。
競合がいる以上、値段だけで勝負している商品は、下げるか維持するかしか選択肢がない、というのが現実です。

「原材料費・物流費が上がった」という理由が正当だとしても、取引先に受け入れてもらえるかどうかは別の話です。
交渉力がなければ、正当な理由があっても通りません。

対応できない会社の共通点

コストが上がっているのに対応ができない会社には、共通したパターンがあります。

「様子を見ている」

原油価格が落ち着くのを待っている。交渉のタイミングを待っている。次の決算が出てから動こうとしている。
待っている間にも、コストは積み上がっています。

「今の取引先を大切にしすぎている」

長年の取引先だから値上げを言い出せない。関係が壊れるのが怖い。この心理は理解できます。
ただ、そのまま続けると自社の体力が削られていきます。取引先との関係を守りたいなら、
自社が体力を維持していることが前提です。

「新しい売り先を探す時間がない」

製造と既存顧客対応で手一杯で、営業に時間を使えない。社長が現場に入りすぎていて、外を見られていないケースです。

「何から手をつければいいかわからない」

問題はわかっている。でも具体的に何をすればいいのか整理できていない。対応していないのは意思の問題ではなく、
優先順位が決まっていないからです。

共通しているのは、「対応していない」のではなく「具体策が決まっていない」という状態です。

すぐ対応できる会社がやっている具体的な行動

同じコスト上昇に直面しながら、すぐ対応する会社は何をしているか。現場で見てきたことをそのまま書きます。

商品別の利益を把握している

まず、自社の商品ごとに「今この価格で売ると、実際にいくら残るか」を計算しています。
コストが上がった現在の数字で、です。過去のデータのままで動いている会社は、
気づかないうちに赤字になっている商品を売り続けていることがあります。

今すぐできることとして、主力商品を5品選んで、現在の物流費・資材費・製造コストを反映した粗利率を
計算してください。黒字のものと、赤字に転落しているものを分けるだけで、次の判断が変わります。

取引先の売上構成を考えている

「量販店1社に売上の60%が集中している」という会社は、リスクの高い状態にあります。
その1社に値上げを断られたら、打つ手がなくなります。

すぐ対応している会社は、値上げが通りやすい売り先、もしくは単価が高い売り先を探し始めています。
具体的にはこういう方向です。

業務用・法人向けとして、飲食店、給食、ホテル、社員食堂などがあります。個人向けの小売より価格交渉がしやすく、
ある程度まとまった量が動きます。「うちは小売向けしかやったことがない」という会社でも、
製品をそのまま使えるケースは多いです。

通販・ECで自社直販すれば、中間マージンがなくなります。物流コストは上がりますが、
取引先に価格を縛られずに済みます。値上げを自分のタイミングで出せるのは、小売取引にはない強みです。

地域の小型小売・専門店は、量販店ほど価格にシビアではありません。地域の食品店、道の駅、産直施設など、
品揃えに特色を求めているところは、多少値段が高くても売り場に置いてくれます。

既存取引先への値上げ交渉を準備してからやっている

「値上げを断られた」という話をよく聞きますが、断られている会社の多くは、準備不足のまま交渉に臨んでいます。

すぐ対応する会社がやっていることは3点です。

まず、コスト上昇の根拠を数字で示すことです。「物流費が何%上がった」「資材費がいくら増えた」という
具体的な資料を用意します。感覚や雰囲気で交渉しても通りません。

次に、値上げ幅を段階的に提案することです。いきなり10%の値上げを求めるのではなく、
「まず3%、半年後にさらに見直す」という形で提案する方が、取引先も受け入れやすいです。

そして、値上げを断られた場合の代替案を持っておくことです。
「値上げが難しいなら、この仕様を変更することで単価を維持できます」という選択肢を用意しておくと、
交渉が行き詰まりません。

取引先を分析している

すぐ対応する会社は、すべての取引先に同じ行動をしていません。取引先を3つに分けて考えています。

伸ばす取引先は、値上げに理解を示してくれる、量が増えている、支払いが安定しているところです。
ここには時間と営業力を積極的に使います。

維持する取引先は、今すぐ伸ばせないが関係は続けたいところです。対応はしますが、新規開拓に使う時間と混同しません。

縮小・撤退を検討する取引先は、価格だけで判断してくる、値上げを一切受け入れない、利益が出ていないところです。
ここに時間をかけることは、他の取引先に使える時間を削ることと同じです。

社長が最初にやるべきこと

ここまで読んで、「何となくわかった」で終わらせないために、最初にやることを1つだけ決めます。

今週中にやることは、自社の売上構成を確認することです。取引先別の売上比率を出して、
上位3社で売上全体の何%を占めているかを見てください。

70%を超えていたら、売り先の分散が急務です。来月から新しい売り先へのアプローチを始めることを決めてください。
50%前後なら、まず既存取引先への値上げ交渉の準備を進めます。根拠資料を作ることから始めてください。
30%以下に分散できているなら、商品別の利益率の見直しを優先します。どの商品が足を引っ張っているかを
特定することが先決です。

やることが決まれば、動けます。「何から手をつければいいかわからない」という状態は、
この確認をするだけで変わります。

最後に

原油高騰は、すべての食品会社に同じように影響しています。同じ条件の中で、すぐ対応する会社と
なにもしない会社の差は、やることが具体的に決まっているかどうかだけです。

コストが上がり続ける中で、待つことはリスクです。今できることから、一つずつ手をつけていきましょう。

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